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「神代姫桜」製作裏話 ~楽曲編~ 終章

...2009/09/26 23:59...

間が空いてしまって申し訳ありませんでした。
それでは6曲目、「コノハナサクヤ」のお話です。






そもそも本作「神代姫桜」はこの1曲から全てが始まった企画であります。
2008年4月、なかなか時間がとれず花見に行けなかった自分は
日々ちまちまと曲作りに余暇を費やしておりました。
鬱憤を晴らすかのように(笑)
元来花見スキーの自分にとって、或いは日本人のナショナリズムなのでしょうか。
桜というのは非常にイメージをかき立てられる存在であり
それをテーマにした曲を作ることは
いち表現者として是非為しておきたいことだという気持ちが前々からありました。

当時、自分は初音ミクという新しい表現手法に出逢い、方向性を模索していました。
そこに「いつか一緒に音楽をやろうぜ」と約束を交わしていた十年来の朋友J-Key、
合縁奇縁、一緒にサークル活動をすることになったおにねこ嬢の両名が加わってくれたことで
現Nick-Ninthとしての名義で初めて完成させた作品がこの「コノハナサクヤ」だったのです。

製作過程はあまりスムーズではありませんでした。
サビ部分が気に食わず何度も何度も没案を重ねて出てきたメロディだったことを覚えています。
作曲開始から正味数週間はそこで詰まっていたおぼえがありますねw
逆にイントロは実にあっさりと出来た部分で、これは自分の悪癖なのですが
気に入ったイントロができるとそこで満足してしまって作業が停滞してしまうというwww
(イントロだけ作って未完の曲が・・・はたして何曲あるやら)
そんな諸々も重なり非常な難産だったのです。
さながらコノハナサクヤヒメの火中出産のような・・・
ってそんなに大変ではないですねウソですゴメンなさい。
腕利きのベーシストJ-Keyと活動をともにするにあたり
当然のようにベースは生楽器で入れようという話になりまして
・・・まあ自分はもとより彼の演奏が入る前提で曲を書いていたのですが
氏の十八番であるスラップ奏法を前面に出す方向で
「好き放題やっちゃって頂戴」という注文を出しました。
そして・・・上がってきたテイクは自分の予想通り、否、予想以上の素晴らしいものでした。
身内びいきの自画自賛になってしまいかねませんが、
このほぼ一発録りだったテイクは本当に秀逸で、後に「神代姫桜」にて曲の再録音を行う際にも
代替のテイクがあがらなかったほどでした。
またJ-Keyの友人のギタリストKen氏にも音源を渡し、作中のギターソロを入れてもらいました。
ワイルドなプレイスタイルと聞いていた通りの演奏で
曲のクライマックスに相応しい激しく切ないフレーズを提示してくれ、
楽曲にはよりいっそう命が吹き込まれたのでした。
本作のCD、神秘封音銅鏡(しんぴのふういんどうきょう)には
カラオケバージョンのテイクも収録してありますゆえ、
是非一度ヘッドホンでじっくり演奏を聴いて頂きたく思うのですよ。

歌詞は主題ありきで作る、「タイトル先行型」でした。
当初は桜の曲ということで何か漢字の、四文字熟語系のタイトルをと考えていたのですが
ふと思い出したのが桜の語源となったといわれる日本神話の花の女神、
コノハナサクヤヒメの名でした。
絶世の美女と謳われた女神、時を越えた恋物語―――
そういう構図が浮かんだ時点で、あとは比較的すらすらと筆が走ってくれましたね。
コノハナサクヤ、という言葉―――これは愛しいひとの名と「この花は咲くのだろうか」という
ことば本来の意味とのダブルミーニングになっておりまして、
作中では最後の締めくくりのひとこととして配置されています。
正直偶然の思い付きでしたが特に気に入っている部分だったりしまして(自画自賛)
当時、なんか作詞の神様的なモノが自分に降りてたのかもしれませんw
ちなみにこの時点ではイワナガヒメのことは特に盛り込むつもりはありませんでした。
「主人公」と「君」にしたって、確たる設定があるわけではなかったんです。
(「君」はコノハナサクヤヒメのイメージではありますがそれも漠然としたもので
 ましてや主人公はニニギのクソ野郎じゃないですし)

さて、この曲を書くにあたっての縛りというか表現上の演出にふたつ、意識したことがあります。
ひとつめは一人称の禁止です。
これには恋する相手、すなわち「君」という単語(存在)を引き立たせる意図と
主観の叙情的な想いを唄いつつも、展開される物語を叙事的に表現したいという意図がありました。
神話にモチーフを得た時点で、今回はちょびっと格調高く行ってみようと思いまして
実際の作中でもA、Bメロは口語的に進行しつつC(サビ)のみ文語的表現に徹するという
変則的な表現を用いていますね。
そしてふたつめは「さくら」という単語の封印です。
「桜の曲」という前提で作り始めたこの曲ですが
世には既に桜の曲は幾万とありますし、今その主題で曲を作るのならば
それらとの差別化を少しでも図りたいという自分のささやかな野心からの思い付きでした。
・・・同時にそれは自分の表現力と語彙の限界に対する挑戦でもあったわけでw
桜の姿無き桜の歌にこの曲を聴いてくれた方が「桜」を感じてくれたなら
それはもう作り手としては感無量なわけで、そんなネタを仕込んでみましたが
はてさてどうだったのでしょうね。
個人的には手がけた歌詞の中でもかなり気に入っているものの1つなので
共感してくれる人がいたら心底嬉しいのですけれども。

そしてそれから一年。
少なからず愛着あるこの曲を元に、さらにイメージを広げてみようと思ったことから
夏コミの企画が生まれました。
たったひとつの曲から広がった物語、登場人物、楽曲。
それらのものが織り成す新しい「コノハナサクヤ」の世界ー――

どうか聴いてくれた皆さんの心に美しい花が咲き乱れますように。 
 

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